皆様ご存知の通り、ハリルホジッチ監督が解任されました。あえて当ブログではこの解任についてはコメントしないでおきますが、ずっと出てくる「日本らしいサッカー」ってなに?ってお話をしてみたいと思います。
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協会が目指すサッカー
今回のハリル解任会見の際、日本が目指すサッカーについてJFAの田嶋会長が「私の意見」と言いつつもこういった発言をしていました。
記者:日本サッカーが目指すべき道は?
「基本的な戦術ベースは一緒ですが、監督によって、戦術、やり方がが変わるのは事実。ハリル監督がやろうとしていたのは速い攻撃であったのは事実で、必要なのも私たちは分かっている。選手たちがそれを全うできるかを、今までW杯で通用したもの、しなかったものをしっかり分析して、チームを作らなければならないと思っています。ベースには監督のやりたいサッカーは出てくると思うが、日本らしいサッカーが確立されている中で、しっかりボールをつないでいくサッカー。それは私の意見ですから、監督がどう思うかは木曜日に聞いて欲しいと思います。こういうサッカーが日本のサッカーだと言って、できるものではないと思っています。監督うんぬんでなく、その場その場で選手が一番いい方法を選択できるサッカー。我々が世界のサッカーにアダプトしていくことによって、自然と日本のサッカーになっていくんだと思っています」
はい。この時点で「いかに協会が何も考えていないか」がよくわかると思います。ツッコミ入れてみましょうか。
これは私だけの意見かもしれませんが・・・。あくまでベースはその国ごとの文化によって特色があって、それをうまく組織として機能させるのが監督(指導者)の仕事だと思うんですよ。代表チームで監督のやりたいサッカーをベースにするにはいくつか特殊な条件が必要であり、今の日本では非常に難しいと思うわけです。
特殊な条件とは何か。
まず監督の哲学とその国のサッカー文化がフィットしていること。次に、周りの人間(協会、メディア、ファン)がしっかり我慢できること。最後に、協会、メディア、ファンの質(サッカーリテラシー)が一定水準を超えていること。これが大前提だと考えています。
そして、「しっかりボールをつないでいくサッカー」。とても引っかかる言葉です。
おそらくですが。間違いなく皆が幻想を抱いて「このサッカーをしたい」と思っているのは「スペインのサッカー」だと思います。あのサッカーを日本で再現したいと。それが悪いとは思いません。現にリーガでも戦力として認められる選手が何人か出てきました。
じゃあ、日本は「スペインのサッカー」を日本で再現するのに一体何をしたのでしょう?
結論からして何もしていません。
スペインのサッカーは、徹底された一貫教育を行う各年代別の育成組織、国を挙げた環境作り、優秀な自国の指導者、それを支える設備と資金によって成り立っています。思えば、2014年のW杯で結果を残したドイツも育成改革をして成功を収めた国の一つです。
日本らしいサッカーを日本がやるにはどうすればいいのか
日本らしいサッカーが何か、はいったん置いておきます。問題は、それをどうトップチームで成果を出せるようにしていくか?です。
逆算して考えてみましょう。さっきも言った通り、選手の持っているサッカー文化と監督のマッチングがとても重要になります。これは強豪国では当たり前の話です。
でも、そうそう都合よく優秀な選手や指導者が出てくるわけではありません。なので、そういった選手や指導者を「育成」していく必要があります。
日本ははっきり言って、この「育成」の分野で大きく後れを取っています。
日本には、「下積みを美徳」とする風潮が昔からあります。実力ではなく、地位や名声を持つ人が優遇される文化が強く根づいています。現に、若くて優秀な日本人指導者やその候補はたくさんいますが、「日本で活躍している」若くて優秀な日本人指導者はいません。日本ではそういった優秀な指導者でも「若い」「経験がない」といった理由で避けられてしまうのです。
今、情報は「得たいときに得たい情報を好きなだけ得る」ことのできる時代になりました。簡単に言えば、今まで下積みと称して長い期間をかけて学ばなければならなかったことがはるかに短期間で学ぶことができる時代です。もちろん実際に経験してみなければわからないことがあるのもわかっていますが、逆に言えば「経験しなければわからないこと以外は経験しなくても学ぶことができる」のです。
まず若い指導者に実際に経験を積ませてあげられるような場所を作ること。とても大事なことです。
もちろん、選手育成にも全く同じことが言えます。日本には部活というものがあります。一番色々なことが吸収できる時期にベンチで試合に出れずに過ごす。これが今までにどれだけ素晴らしい才能をつぶしてきたのか。想像するだけでゾッとします。
スペインではカテゴリーがかなり細かく分かれており、自分のレベルにあったチームに所属することができます。移籍なんかもよくあることです。選手自身が、自分のプレーしたいクラブでプレーできるのです。そうやって過ごしてきた18歳のスペイン人選手と日本人選手の間には覆すことのできない圧倒的な差の試合経験の差というものが必ず出てきます。
指導者・選手の育成ツリーの改革。今日本が最もやらなければならないことだと思います。
そうした育成組織があって初めて、「国としてこういった方針で選手を育成していく」ということが言えると思うのです。言い方は悪いですが、今の日本代表は「日本でサッカーがうまいといわれている選手を上から順に並べました」という風にしか見えないのです。ちゃんと芯のある一貫された哲学をもって育成すべきだと思います。
そうして初めて、先ほどの田嶋会長の言葉にあった「こういうサッカーが日本のサッカーだと言って、できるものではないと思っています。監督うんぬんでなく、その場その場で選手が一番いい方法を選択できるサッカー。我々が世界のサッカーにアダプトしていくことによって、自然と日本のサッカーになっていくんだと思っています」という部分が実現されていくと思うんですよね。今の状態じゃとてもこんなサッカーはできません。
最後に
長くなりましたが、まだまだ言いたいことがたくさんあります。また時間ができたらつらつらと書いていきたいと思っております。
育成改革というのは1年とか2年で急に結果の出るものではありません。10年、20年という長いスパンで見ていかなければなりません。やるなら早いうちにやってくれ、と切に願います。
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